「九条の会」アピールを広げる美術の会
(略称 九条美術の会)アピール

「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています」

2004年6月10日に井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子さんの九氏による「九条の会」が発足して以来、日本の各地・各界から賛同の声が広がっています。

憲法九条は、あの忌まわしい第二次世界大戦の痛恨から、戦争放棄と戦力を持たないことを誓った証しであり、戦争のない世界へ向けての貴重な宝となっ ています。にもかかわらず今、その九条を中心に憲法を「改正」し、日本をアメリカにしたがって「戦争をする国」にしていこうとする危険な動きが出てきてい ることに重大な危惧をいだかざるを得ません。

九条の会のアピールは、日本国憲法を守り、日々行使していくことは、「国の未来の在り方に対する、主権者の責任」であり、日本と世界の平和な未来のために日本国憲法を守る一点で多くの国民が手をつなぎ、「改憲」を阻む努力をしようと強く訴えています。

私たち美術にかかわるものにとって、平和と自由はかけがえのない表現の保障です。かつて美術家はあの侵略戦争で表現の自由を奪われ、戦争に加担させられたにがく苦い歴史をもっています。私たちの先輩は、この道を二度と繰り返してはならないと、戦後60年に亘り、平和・自由・人権を根本精神とする日本国憲法のもとで、営々と平和と創造の道を歩みつづけてきました。

21世紀をむかえて、戦争のない世界を求める声は地球のすみずみからわき起こってきています。この道にこそ大きな確信を抱き、新しい世紀を戦争のない平和で豊かな世界にしていくために、一人の人間として力を尽していきたいと強く願うものです。

戦後60年の記念すべき年に、とりわけ、「戦争をしない国」の憲法九条を持つ日本の、美術にかかわるすべての人々が平和のために声をあげることは、大きな意味のあることだと思います。「九条の会」のアピールに賛同する私たちは、ここに「『九条の会』アピールを広げる美術の会」をおこし、広く国民とともに、憲法九条を守る一点で、「戦争をする国」に逆戻りさせない運動を広げていきたいと考え、それぞれが持てる力を大いに発揮することを心から呼びかけるものです。

2005年6月18日 「『九条の会』アピールを広げる美術の会」(略称 九条美術の会)発起人・同 呼びかけ人

大野 五郎(画家)
岡部 昭(工芸家)
川上 十郎(画家)
窪島誠一郎(無言館館主)
佐藤 忠良(彫刻家)
鳥居 敏文(画家)
西 常雄(彫刻家)
野見山暁治(画家)
水尾比呂志(評論家)